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東京地方裁判所 昭和48年(むのイ)215号 決定

被告人については、刑訴法八九条四号、五号に該当する事由があり、裁量による保釈を許すのは相当でないというべきであり、原裁判はその判断を誤つている。

別紙 (二)

一、一件記録により、被告人についての保釈関係手続の経過をみると、

(1) 被告人が、昭和四八年二月二日、威力業務妨害罪により当庁に勾留中のまま起訴されたこと、

(2) 同月九日、弁護人から保釈の請求がなされ、同月一〇日、検察官から保釈は不相当であるとの意見が出されていること、

(3) 当庁刑事第一四部裁判官が身柄引受人と面接するなどして同月二〇日、被告人に対し保釈を許可したこと、

(4) 同日、右裁判書の謄本が東京地方検察庁に送付され、保釈保証金も納付されて検察官の釈放指揮により被告人は釈放されたこと、

(5) 同月二八日、右裁判を不当として検察官から本件準抗告の申立がなされたこと、

がそれぞれ明らかである。

二、右のとおり、本件準抗告は、保釈によつて被告人の身柄が釈放されてから実に八日間もの期間経過後なされたものであり、従来、保釈許可の裁判に対する検察官からの準抗告は、執行停止の申立とともにほとんど例外なく原裁判の当日か遅くとも翌日までに申し立てられていたのに比べ、著しく遅れたものであるといわざるをえない。そして本件準抗告申立が例外的に遅れたについては、申立人である検察官自身(本件の公判担当)のもとに原裁判書の謄本が届いたのが申立の前日である二月二七日夕刻であつたとの事情があるようであるが、前記(4)のとおり、原裁判の当日に、その謄本が東京地方検察庁に届いており、同庁検察官の釈放指揮により被告人が釈放されているのであるから、右遅延は検察庁内部の事情によるものであつて、検察官同一体の原則上、検察官の責に帰すべき事由と評するほかはない。

三、ところで、抗告または準抗告の申立は、特別の定めのあるものを除いて、原裁判の取消・変更を求める実益がある限りいつでもできると刑訴法(四二一条、四二九条四項参照)は規定しているが、これは種々様々な原裁判について一律に申立期間を定めるのは不適当だということや、各原裁判の性質上、不服はすみやかに申し立てられるであろうと想定されていることからくるものと思われ、刑事訴訟における手続の安定性の要請に鑑みると、その法意は、原裁判後特段の事情もないのに、どんなに長期間経過しても不服申立を許容するところにあるのではないというべきであつて、抗告ないし準抗告の申立がなるべくすみやかに行なわれなければならないことは、判決に対する上訴その他について申立期間を法定して手続の安定を企図している刑訴法の精神に照らし、当然のことというべきである。そして、殊に、保釈許可の裁判に対する準抗告については、その申立が遅れることによつて、一たん釈放された被告人の身柄の自由を不安定な状態におくこと著しいものがあり、かつ、検察官としては、釈放後もし被告人に同法九六条一項各号に該当する事由があれば、ただちに保釈取消の請求もなしうるのであるから、検察官の責に帰すべからざる特別な事情のない限り、本件申立のように原裁判の告知を受けたのち著しく遅れて申し立てられた準抗告は申立自体不適法であると解するのが相当である。

四、本件準抗告申立が遅延した事情は、前記二に示したとおりであり、検察官の責に帰すべからざる特別な事情があつたものとは認めがたいから、本件準抗告の申立は、不適法として、これを棄却する。

申立の趣旨 「右の者に対する頭書被告事件について、昭和四八年二月二〇日東京地方裁判所裁判官がした保釈許可の裁判を取消す。」との裁判を求める。

申立理由の要旨 別紙(一)記載のとおり。

当裁判所の判断 別紙(二)記載のとおり。

適用した法令 刑訴法四三二条四二六条一項

(鬼塚賢太郎 片岡安夫 安廣文夫)

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